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土地区画整理事業中の土地評価|長瀬不動産鑑定事務所 広島市

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土地区画整理事業中の土地評価
区画整理の工事が進行し、換地予定地(従前の土地に代わって新たに取得する土地)が使えるようになると、仮換地指定通知があります。
区画整理事業中の土地評価は、この仮換地指定までは、従前の土地が対象となります。
問題は、清算金の権利義務の帰属です。
清算金というのは、換地が従前の土地に比較し価値が増したり減価したときに発生する清算金です。
土地区画整理法上は、換地処分時の土地所有者に帰属することになっていますが、最終的な帰属者が換地処分時の土地所有者でいいかどうかは、別です。
これについては、昔から争われてきましたが、現在では概ね決着しているようです。
仮換地自体が売買の対象となった場合は、当事者の特段の合意がない限り、売主に帰属するというのが裁判所の考えです。(最高裁判決昭和35(オ)613不当利得返還請求事件)
最近では、松江地裁平11(ワ)第144号事件です。
仮換地指定後、土地はa→b→cと転売され、換地処分後、cが清算金2309万5947円を取得したため、aがcに対し、不当利得返還請求を起こしたものです。
裁判官は、仮換地自体を売買の目的として代金額を定め、換地清算金の徴収又は交付についてなんらの特約がない以上、算金の徴収又は交付についての権利義務を売主に帰属させることが、当事者の意思に合致し公平だと言ってます。
また、土地区画整理法については、土地区画整理法129条は、施工者と土地の権利者間の関係において土地区画整理事業を円滑明確に施行させることを目的として規定されたものであるから、売買当事者間の実体法上の権利関係まで規定したものとは解されない、としたのです。
不動産鑑定評価においても、仮換地が使用収益出来る時期以降は、仮換地自体を評価し、評価時点においては清算金が確定しないため、清算金は考慮外とします。
従って、不動産鑑定評価額で買うと、買主に清算金が交付されれば、買主は対価以上の利得をえ、他方、清算金を支払うなら、二重払いとなる不都合が生じるわけです。
従って、当事者間の実質的な公平を図るには、売主に清算金交付権利・徴収義務を帰属させる方がいいのです。
それ故、仮換地を売買するときは、清算金は売主に帰属させるのが本筋であることを十分理解し、買主に帰属させようとするときは、明確な特約の合意と売買契約書等への記載が必要です。
なお、松江地裁の事例は、a→bには清算金帰属について何ら合意はなく、b→cにおいては、清算金をcに帰属させる特約合意がありました。
しかし、a−bとの契約で何ら合意がないため清算金はaに帰属する結果、bは清算金に無権利のため、cには移転しないのです。
cが関与しないa−b間の契約如何で、cの結論が左右されるのは一見不合理のようですが、cは仮換地の評価額に見合った対価で不動産を取得しており、清算金がaに帰属したとしてもcは何ら損失を被っていません。
逆に、cに帰属させれば、cは利得をえaは損失を被るため、判決は妥当です。
仮換地後、土地が転売されるときは、仲介業者さんは注意が必要だというのが松江地裁の教訓です。
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